子供たちを自然の中に連れ出すと、彼らの好奇心は一気に開花します。小さな花を見つけては「これ何の花?」と尋ねたり、面白い形の葉っぱを拾っては「こんな形初めて見た!」と歓声を上げたり。子供たちの自然への興味は尽きることがありません。
でも、そんな子供たちに花や植物の名前を尋ねると、意外と答えられないことが多いのです。「うーん、黄色い花?」「ギザギザの葉っぱ!」など、色や形では表現できても、正式な名前を知らないのですね。
私は保育士として、子供たちにもっと植物への興味を深めてもらいたいと考えています。そこで役立つのが、「ネイチャーゲーム」。自然の中で五感を使って遊ぶ体験的な学習法です。
このゲームを通して、子供たちは楽しみながら植物の名前や特徴を学んでいきます。「あの白い花はシロツメクサで、ピンクの丸い花はコマツヨイグサなんだ」と、少しずつ植物の名前を覚えていく子供たち。そして、知っている植物が増えるほどに、自然への興味もどんどん膨らんでいくのです。
今回は、ネイチャーゲームの中でも、特に植物の名前を覚えるのに効果的なゲームをご紹介します。子供たちと一緒に、楽しみながら植物の世界に飛び込んでみましょう!
ネイチャーゲームとは
ネイチャーゲームの目的と意義
ネイチャーゲームは、言葉の通り自然(ネイチャー)の中で体験的に学ぶゲームの総称です。1970年代にアメリカで生まれ、日本では1980年代から広まりました。五感をフルに使って自然と触れ合うことで、子供たちの感受性を豊かに育むことが目的です。
ネイチャーゲームの大きな意義は、以下の3つが挙げられます。
- 自然への興味や関心を高められる
- 感覚を研ぎ澄まし、集中力を養える
- 仲間と協力する楽しさを体験できる
自然の中で体を動かし、友達と協力しながら発見する喜びは、子供たちの心に大きな印象を残します。そして、自然の面白さや不思議さに気づくことで、もっと知りたい、もっと触れたいという意欲が湧いてくるのです。
ゲームを通して自然を感じる
ネイチャーゲームのもう一つの魅力は、自然を「感じる」ことに重点を置いている点です。例えば、「目隠しをして、木の幹の手触りを当てっこする」というゲームでは、普段何気なく見ている木も、触って感じることで新しい発見があります。
また、「耳を澄まして、鳥の鳴き声を聞き分ける」ゲームでは、鳥の声一つ一つに意識を向けることで、自然の中には様々な音があふれていることに気づかされます。
こうしたゲームを通して、子供たちは自然の中に隠れた宝物を発見していきます。そして、その経験が自然への愛着や、大切にしようという気持ちにつながっていくのです。
花や植物の名前を覚えるゲーム
ここからは、花や植物の名前を覚えるのに効果的な3つのネイチャーゲームを紹介します。子供たちの集中力を高め、楽しみながら植物への理解を深められるゲーム揃いですよ。
花かるた
花かるたは、「花札」ならぬ「花かるた」。身近な花の写真と名前がセットになったカードを使って、「かるた」の要領で遊ぶゲームです。
遊び方はいたって簡単。子供たちは円になって座り、真ん中に花の写真カードを広げます。そして、先生やリーダーが花の名前カードを読み上げたら、いち早くその花の写真カードを取るのです。
「たんぽぽ!」「れんげそう!」。次々に花の名前が呼ばれる中、必死に聞き耳を立てる子供たち。「あっ、これだ!」と目を輝かせてカードを取る姿は、とても楽しそう。
花かるたは、子供たちの聴覚と視覚を同時に刺激しながら、花の名前と姿を一致させていく素晴らしいゲームです。知っている花の名前が増えるごとに、子供たちの自信も育っていきます。
葉っぱ探偵団
葉っぱ探偵団は、葉っぱの形や質感の違いに着目する観察ゲームです。公園や森の中で、子供たちは「探偵」になって、いろいろな形の葉っぱを集めます。
探偵たちはルーペを片手に、地面をくまなく観察。「これは葉っぱの縁がギザギザしてるぞ!」「こっちはツルツルの丸い葉だ!」と、それぞれの発見を声に出しながら、葉っぱを拾っていきます。
集めた葉っぱは、形や大きさ、質感ごとに分類してみましょう。図鑑で調べると、それぞれの葉っぱがどんな植物のものか分かって、さらに興味が湧いてきます。
葉っぱ探偵団は、子供たちの細やかな観察眼を養う素敵なゲーム。葉っぱの色や形のバリエーションの豊かさに気づくことで、自然の多様性への理解も深まります。
花や実の宝探し
春や夏の森は、可憐な花たちであふれています。秋の森は、色とりどりの実をつける木々が目立ちます。そんな季節の移ろいを肌で感じられるのが、この「花や実の宝探し」です。
子供たちは、森の中に設定された「宝map」を手に、花や実を探す冒険に出発。「こんな赤い実、初めて見た!」「ドングリだ! 拾おう!」と歓声を上げながら、夢中で宝探しを楽しみます。
見つけた花や実は、その場で先生に名前を教えてもらいましょう。すると、次からは自分で見つけた時に「これ、○○の花だ!」と自信を持って言えるようになります。
こうした宝探しゲームは、子供たちの冒険心をくすぐりながら、植物の名前への興味を高めてくれる最高の遊びです。
ゲームを通して学ぶ植物の特徴
ネイチャーゲームで植物の名前を覚えると同時に、植物の特徴への理解も深まります。ここでは、ゲーム中の子供たちの視点に立って、植物の特徴の捉え方を解説します。
花の色や形に注目しよう
まず子供たちが興味を示すのは、花の色や形の違いです。真っ赤なポピーの花、白く可憐なシロツメクサ、ひと際大きなヒマワリの花。色や形、大きさの違いが、子供たちの目をひきつけます。
そこで、花かるたなどのゲーム中は、花の色や形に意識を向けるよう促してみましょう。「よく見ると、花びらの形が違うね」「真ん中の部分の色は何色かな?」と投げかけることで、子供たちは植物をより細やかに観察するようになります。
こうした会話を重ねることで、同じ黄色の花でも、タンポポとキンセンカでは花の形が違うことに気づいたり、ヒマワリは花びらが外側にあって、真ん中は別の花が集まっていることを発見したり。子供たちなりの花の見方が育っていきます。
葉っぱの形や質感を感じてみよう
葉っぱは、花ほど華やかさはありませんが、その形の多様さは驚くほど。ギザギザの葉、ハート型の葉、細長い葉など、バリエーション豊かです。葉っぱ探偵団のゲームを通して、子供たちはそんな葉っぱの形の違いに目を向けるようになります。
また、手で触れてみることで、葉っぱの質感の違いも発見できます。「ザラザラしてる」「ツルツルだ」「毛が生えてるみたい」。感触の言葉を使って表現する子供たち。触覚を使った観察は、植物への理解をさらに深めてくれます。
このような体験を通して、子供たちは「葉っぱ一枚をとっても、いろいろな種類があるんだ」という気づきを得ます。そうした多様性への興味が、より多くの植物の名前を覚えたいという意欲にもつながっていくのです。
実や種の形の多様性を知る
秋の花や実の宝探しでは、木の実や草の種の形の面白さに気づかされます。
例えば、イチョウの実は銀杏のように細長く、ドングリは帽子のような殻に包まれています。シナノキの実は羽根のようで、風に乗って飛んでいきます。
こうした実や種の形の違いには、それぞれに意味があります。動物に食べてもらいやすい形だったり、遠くに散布されやすい形だったり。そんな植物の知恵に触れることで、子供たちは自然の不思議さにわくわくするのです。
また、ゲームで種を拾う際は、一つ一つの命の重みについても伝えておきたいですね。種は、やがて芽を出し、花を咲かせる可能性を秘めています。その小ささと力強さを感じることが、植物を慈しむ心を育んでいきます。
ゲーム後の振り返りと共有
ネイチャーゲームで遊んだ後は、振り返りの時間を大切にしたいですね。子供たちが感じたこと、発見したことを共有し合うことで、学びを深められます。
発見したことを絵日記に
ゲームで見つけた花や葉っぱ、拾った木の実を、絵日記に描いてみるのはどうでしょう。「シロツメクサを見つけたよ」「ドングリを拾ったよ」と、それぞれの発見を絵と言葉で表現することで、体験がより印象深いものになります。
絵を描くことは観察力を高める良い機会にもなります。「何枚の花びらがあったかな?」「葉っぱの形はどんなだったっけ?」と、記憶を頼りに植物の特徴を思い出す子供たち。細部をしっかり観察しようと、次のゲームではさらに集中して植物を見つめるようになるのです。
みんなで発表会をしよう
ゲームの振り返りは、みんなで発表会をするのも効果的。子供たちが順番に、見つけた植物やその時の気持ちを発表していきます。
「ツバキの花が落ちているのを見つけました。赤くてきれいでした」「どんぐりがたくさん落ちていて、拾うのが楽しかったです」。友達の発見を聞くことで、一人一人の体験が共有され、学びが広がっていきます。
また、発表を聞く際には、子供たちから質問を引き出すことも大切。「どうしてその花は白いの?」「どんぐりって何の木の実なの?」 といった疑問が飛び交うことで、植物への興味がさらに膨らんでいくのです。
図鑑で調べてみよう
ゲームで見つけた植物について、図鑑を使って調べるのも大きな学びになります。子供たちの目に留まった植物の名前や特徴を、先生と一緒に図鑑で探してみましょう。
すると、ゲーム中に気づいた花の色や形が、図鑑の中できちんと言葉になって表現されています。葉っぱの質感や実の特徴についても、詳しく書かれていて、なるほどと納得。体験と知識がつながることで、より深い学びへと発展していくのです。
また、図鑑を使って調べることは、子供たちの自発的な学びを促します。「この花の名前も知りたい」「この木の実はどうやって散布されるんだろう」と、次々に疑問が生まれ、自ら進んで図鑑を開くようになるでしょう。
子供たちの探究心に寄り添い、一緒に図鑑を楽しむ時間を大切にしたいですね。調べたことをノートにまとめたり、疑問に思ったことを話し合ったり。そうした積み重ねが、植物の世界をより身近で魅力的なものにしてくれます。
まとめ
ネイチャーゲームを通して植物の名前を学ぶことは、子供たちに多くの気づきと発見をもたらします。花かるたで花の名前と姿を一致させ、葉っぱ探偵団で葉の形の多様性に触れ、宝探しで実や種の不思議さを体感する。そうした体験が、子供たちの植物への興味を大きく広げていくのです。
また、ゲーム後の振り返りで絵日記をつけたり、発表会で体験を共有したり、図鑑で調べたりすることで、学びはさらに深まります。自分の発見を言葉にすることで、体験が記憶に定着し、友達の気づきを聞くことで、視野が広がる。知りたいことを図鑑で調べることで、自発的な探究心も育まれていくのです。
私がネイチャーゲームを通して伝えたいのは、植物の名前を覚えることが目的ではなく、そのプロセスそのものが学びだということ。ゲームを楽しみ、感動し、疑問を抱き、調べる。そうした体験の積み重ねが、子供たちの成長を支えていくのだと信じています。
これからも、子供たちの心に寄り添いながら、自然の不思議さや命の尊さを伝えていきたいですね。「花の名前を10個覚えた」のではなく、「一輪の花をじっくり見つめられるようになった」。そんな子供たちの変化を励みに、ネイチャーゲームの輪を広げていければと願っています。
子供たちの瞳に自然への愛情が宿る時、きっと世界はもっと優しく、美しく輝き始めるはずです。